パンピーが音楽で飯を食っていけ

 

 


どこぞの向井秀徳よろしく、稼ぎてえと思った。音楽で。そしてできれば何発かヤりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きな音楽で金を稼ぎ、飯を食う。これほどまでに幸せな人生があろうか。きっとあるだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽で飯を食うというと、やはり作曲家や作詞家であったり、実演家(歌手、アイドル、etc…)といった職業が頭に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし私は、作曲や編曲のスキルは持ち合わせていないし、歌や楽器などは最低限のことが何とかこなせるに過ぎない。プロになれるだけの技量は到底ない。音楽で金を稼ぐのは無理なのか。

 

 

 

 

 

 

 

私は諦めない。次のような作戦でお金を稼ごうと考えた。

 

 

 

 

 

 

①「4分33秒」方式によるもの

 

 

 

②カラオケの印税(著作権使用料)によるもの

 

 

 

 

一つずつ解説していく。

 

 

 

①の「『4分33秒』方式によるもの」であるが、これはかの有名な4分33秒という曲を利用したものである。

 

この曲は、アメリカの作曲者であるジョン・ケージが作曲し、1952年に初演された3楽章から成る楽曲である。しかし、3楽章から成る4分33秒の全楽章はすべて「休み」になっている。つまり4分33秒の間、指揮者と演奏者は聴衆を前にしてステージに出るが、全く演奏することなく曲は終了することでお馴染みのアレである。作品コード:0F1-7811-1として、JASRAC管理楽曲の中にも含まれている、立派な著作物なのだ。(JASRACの説明はまた後で)

 

 

Twitterで「4分33秒」と検索すると、面白いかどうかはともかく、たくさんの大喜利ツイートを見ることができる。その内容の多くは「4分33秒間黙っていたら、JASRAC著作権料を請求される」というものである。JASRACが世間をお騒がせするたびに話題にのぼっている気がする。

 

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 こんな感じ。

 

 

 


John Cage - 4' 33'' Death Metal Cover by Dead Territory

 

この曲をデスメタルヴァージョンでカバーした人達もいるぞ。ちなみに私はこの動画を再生したことはない。実態が不明のまま参考資料として提示することには慙愧の思いしか湧かないが、お許し願いたい。再生したところでそこに流れるのは静寂である。虚無である。

 

 

 

お金稼ぎ云々の話の前に、解消しておかなくてはならない疑問がある。それは、「日常で4分33秒間黙っていたら、本当に著作権料は発生するのか?」というものである。

 

 

楽曲利用時に著作権料が発生しないためには「営利目的での演奏ではないこと」「観衆から料金を取らないこと」「演奏者に報酬が支払われないこと」の3つの要件を満たすことが必要になる。

 

 

つまり、日常生活において4分33秒黙ったとしても、著作権料が発生することは無い。

 

 

しかし、上記3要件を満たす演奏会で「4分33秒」を演奏する場合には著作権料を払う必要がある。そこで私は、以下の罪深きアイデアを思いついてしまったのだ。

 

 

 

 

 

「上記の三要件を満たしたコンサートであれば、偶然4分33秒の沈黙があった場合には、曲を演奏したことになり、演奏者は使用料(著作権料)を作曲者等の権利者に払わなくてはいけないのでは?」

そして、もしこれが認められるのなら、仮に私が「1秒間何も演奏しない『1秒』という曲」を作曲すれば、上記三要件を満たしたコンサートで1秒の沈黙が発生するたびに私の元へ使用料が入ってくるのでは???

 

 

 

 

 

 

これはヤバイ。音楽で飯を食っていけと言っているのに最初の提案として無音の楽曲の使用を取り上げるのはどうかと自分でも思うが、致し方ない。

 

 

しかしこの案が認められれば今日から私も石油王である。まずは軽井沢に別荘を建てようと思う。私は軽井沢の別荘の庭にテニスコートを作り、そこでバクオングよろしく爆音でドラムを叩きあげるのだ。

 

 

 

 

そういえば昔、そこまでほしいわけでもなかったドゴームのUFOキャッチャーをやったところ、ドゴームの足の爪が景品を落とす穴に引っ掛かり、虚空にぶら下がり続けるドゴームを私と父親で黙って見ているしかない図ができあがったことがある。世界一強靭な爪であった。文章では伝わりづらい。要はドゴームはクソという話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

著作権使用料の分配の仕組みについての説明である。ここは冗長な説明でしかないので流し読み程度で構わない。

支払われた使用料は、管理手数料(必要経費)と、源泉徴収所得税)等を差し引いた全額が関係権利者に分配される。共作者、歌曲の場合の作詞者、音楽出版者などが関係権利者に加わる場合は、その作品の使用料を、届出された比率に応じて各々の権利者にJASRACからそれぞれに分配することになる。


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 ダラダラと機械的な文章を書いたが、要はJASRACが集めたお金は税とか除いて曲の権利者に分配されますよおという単純なお話である。

 

 

 

 

今回のケースの「4分33秒」の演奏利用では、米国の著作権管理団体ASCAPを通じ、作曲者ジョン・ケージの承継者に分配するほか、ドイツの著作権管理団体GEMAを通じ、音楽出版者PETERS C F LTD CO KGにも分配することになる。(読み方とか一切わかんねえ)

 

 

あっそういえばJASRACの説明をしていなかった。以下、wikipediaからの引用。

 

 

一般社団法人 日本音楽著作権協会(以下、JASRAC)は日本の著作権等管理事業法を設立根拠法に、音楽著作権の集中管理事業を日本国内において営む一般社団法人である。1939年(昭和14年)に成立した「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づいて同年末に設立された。歌詞、楽曲に関する仲介業務を掌る日本最初の社団法人である。以来、JASRACは2001年(平成13年)に著作権管理事業法が制定されるまで62年間にわたり日本で音楽著作権を管理する唯一の団体として活動し、著作権管理等事業法が制定された以降も、他の著作権管理団体との競争下にあっても、日本のプロの楽曲を9割以上管理している。

 

 

要は権利者本人に代わって、楽曲の著作権を管理する団体である。無断で有料コンサートにて曲が使用される、などの行為によって権利が侵されようものなら、ヤ〇ザさながらの圧力で楽曲の使用者から金を巻き上げていく、〇クザのような集団なのだ。マジヤク〇。「ヤク〇」だと他のホットワードを連想させるからダメか。いやヤ〇ザも〇クザもダメだけど。

 

 

 

さて、著作権使用料の分配とJASRACについてようやく説明が終わったので本題に入ろう。早く金を稼がせてほしい。

 

 

 

 

 

 

私はこの疑問を解消すべく、実際にJASRACに問い合わせてみた。ホームページのお問い合わせフォームみたいなとこから質問ができちゃうんだぜ、すごいな。というわけで以下質問とそれに対するJASRACの回答。

 

 

 

Q1 演奏する意図が無く、コンサートの途中でたまたま4分33秒の間沈黙が生じた場合でも、「4分33秒」の利用になってしまうのか。

 

A1 まず、「偶然4分33秒の無音状態があった」というだけで、権利侵害に該当するというのは、俗説に見受けるものの、それが俗説にすぎないことは、多くの方が認識されており、一般通念的には有りえないことと拝察します(ブチギレ)。その作品の利用に当たるかどうかは、その作品である旨の意思表示や、その作品を特徴づける創作的な部分(著作権法第2条1項1号)*1が存在しているどうかが、要点になるものと思います(ブチギレ)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバイ完全にブチギレている。こんなふざけた質問に時間を割かれてブチギレたくなる気持ちはわかる。ありがとう担当者の人。担当者の人って何だ。担当の人。ブチギレ回答ありがとう。

 

 

 

ヤバイ。この理論でいくと、私が企てていた案は全て企画倒れになる。めげずに次の質問をぶつけてみよう。

 

 

 

 

Q2 「1秒間全く演奏しない」という作品があった場合、営利目的の演奏中に、意図無く1秒間の沈黙が生じるごとに著作権料を支払わなければならないか。

A2 前述のように(ブチギレ)、意図なく無音が生じただけで(ブチギレ)、無音の作品の創作者が権利主張するというのは(ブチギレ)、一般通念的にはありえず(ガチギレ)、実際にそのような権利主張があったとしても(ブチギレ)、上記著作権法第2条1項1号の規定(創作性)に照らし、失当であろうと拝察します(ブチギレ)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論:だめでした

 

 

 

 

 

だめでしたごめんなさい。冷静に考えたらそうなんです。もう法律とか抜きにしてありえない話なんだって。よくこんな質問答えてくださったな。私はこのメールが届いたとき、恥ずかしさのあまりとりあえずスマホを地面に叩きつけた。自分の大学名を明らかにして質問したことを後悔した。ごめん後輩。もう皆はJASRACに就職できねえ。その時地面にできたちいちゃい穴に入れるものなら入りたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしここで食い下がるわけにはいかなかった。もう一つの案である、カラオケ印税作戦で金を稼いでいこう。

 

 

 

 

 

 

細かいことはよくわからないが、カラオケで曲を再生したときにも著作権使用料は発生し、著作者等に分配される。ということは、自作の曲をカラオケに登録し、自分で延々と流し続ければそのうちすごいことになるのではないかと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

これはヤバイ。私は軽井沢に別荘を建て、そこでドゴームのぬいぐるみを八つ裂きにするのだ。

 

 

 

 

 

 

 

ゴールデンボンバー鬼龍院翔や作詞家の秋元康などは、著作権使用料だけで軽く億は超えるぐらい稼いでいるらしい。どっかのサイトに書かれていたことなので信憑性は薄い。でも多分そうなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

ウキウキでカラオケの使用料の仕組みなどを調べていたところ、同じことを考え、実行に移した輩を見つけてしまった。世界は狭い。たぶんこいつも軽井沢にドゴームを飼っている。

 

調べればこの男、この行為によって裁判沙汰となっているのだ。以下詳細を記す。

 

大阪府岸和田市の男性は自分で作詞・作曲した曲をカラオケ会社に持ち込み、有料で配信楽曲に入れてもらうサービスを利用

自宅や知人宅など16カ所にカラオケ端末を置き、2009年から自分の曲を再生し続けた

09~11年に大手カラオケ会社のランキングでAKB48などの人気曲を押しのけ、たびたびトップ3を独占

不審に思ったJASRACが事情を聴くと、男性は意図的な操作を認めたが、返金に応じないまま連絡が取れなくなった

東京地裁大須賀滋裁判長)は、男性に対して2年半の間に受領した約1700万円を日本音楽著作権協会JASRAC)に返還するよう命じる判決を下した。

 

 

 

何でだ。自作の曲をカラオケで流し続けるのは何でダメなんだ…カラオケで自作の曲無限ループ禁止法なんてないだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴームで軽井沢を飼いたい私は、再びJASRACに尋ねてみるしかなかった。

 

 

 

 

 

 


Q1 自作曲をカラオケで流し続けた男性に、使用料を返還するよう請求した事件
があったが、なぜこの行為は不正なのか

 

A1 通信カラオケの使用料は、1作品をシステムに収録するごとに発生する「基本使用料」と、受信装置1台当たりの月間の情報料(※)の10%×稼働台数、で計算される「利用単位使用料」の合算となっています。


※通信カラオケ事業者が、音楽コンテンツ等の対価として店舗から支払いを受けている料金
「基本使用料」…個々の作品に紐づいて計算
「利用単位使用料」…事業者の総収入に紐づいて計算


(回答続き)「利用単位使用料」の分配は、実際のカラオケリクエスト数に基づく「回数データ」に基づき行うことになります。また通信カラオケ事業者からは、①新しく配信する
利用曲目の情報 ②配信を取りやめることとした曲目の情報 ③受信装置台数 ④アクセスコード(※)数のデータも報告いただいています。上記報告と、通信カラオケ事業者から別途提供を受けているリクエスト回数データを基に分配額を計算し、権利者に分配しています。
※アクセスコードとは、店舗でリクエストを受け取るために付されているコードのことで、アクセスコード数とは、JASRACの管理する楽曲のアクセスコードの総数を言います。


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(続き)このように、収入にリンクして計算された使用料を、リクエスト数に基づく「回数データ」で分配する場合、リクエスト数に不正があれば、不正行為者は、本来他の権利者が得たであろう利益をそこね、不当に利益を得ることになります。このような次第により、JASRACは、不当利得の返還請求を行っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論:だめでした(?)

 

 

 

 

 

 

 

なんかカラオケの使用料って複雑だった。めちゃくちゃ簡単にいうと、再生された回数に応じてハイどうぞと言わんばかりに金が払われるのではなく、あらかじめカラオケと結んだ包括契約によって得た収入から、再生数に応じて分配される、という認識でいいのだろうか。(弱い頭で一生懸命理解しようとしたんだけど間違えてたらごめん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

単純に再生数に比例してお金が払われる絶対的なものではなく、他曲との比較の上分配額が決まるというものである。なるほど、それならば意図的に再生しまくると、本来他者に入るはずであった正当な分配額に狂いが生じるということか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分そういうことだろう。それにしても大学生のアホみたいな質問に丁寧に返してくれたJASRACには頭が下がる。

 

 

 

 

冷静に考えて、このような質問をすることは「私はこんな不法行為をしてみたいんでえすwwwwwwwwwww」と宣言することに限りなく近い。この質問をした時点で、私は危険人物としてブラックリストにその名前を刻んでいる可能性がある。

 

 

 

 

岸和田の男性がいなければ、私は自作の曲をカラオケで流し続け、犯罪者となっていた可能性もある(ない)。ありがとう岸和田の男性。俺はお前が嫌いじゃない。好きでもない。

 

 

 

 

 

 

カラオケの方に関しては、まだまだ自分の知識不足、勉強不足が顕著であり、新たに湧いた疑問がないこともないのでこれからもう少し詳しく調べてみたい気もするが、まあやらないだろう。しんどい。

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ雑にまとめると、


• 「4分33秒」方式によるもの…一般通念的にありえないし(ブチギレ)、著作権法第2条1項1号の創作的な部分が存在していないからダメ
• カラオケの印税によるもの…ちゃんとした方法で使用料もらうべき人の利益を損ねるからダメ

というところである。

 

 

 

 

 

 

JASRACの回答に対して、特に異論はない。むしろブチギレながらも誠実に回答してくれてありがとうございますという感じである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽で飯を食っていきたいと思っている方がおりましたら、ちゃんとした方法でひたむきに頑張ってください。軽井沢からゴニョニョと一緒に応援しています。

*1:

著作権法2条1項1号 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。