理想の生き方
※「死」というワードが多く使用されています。苦手な方は閲覧の際、ご留意願います。
「そこで辿り着いたんだけどさあ、俺の理想の生き方って、餓死だわ」
ツッコミが追い付かない。
理想の死に方ではないのか?理想の生き方が餓死って何だ?生きたいのか死にたいのか?
というか本当に餓死が理想なのか?多分あれつらいよ?経験したことないから知らないけど。苦しんで死ぬのが理想の生き方なのか?いや理想の生き方が餓死って何だ?
彼は間違いなくそう言っていた。
私は焼肉屋という肉を焼いた食べ物である焼き肉を食べる施設で肉を焼いていたところ、違う席にいた大学生ぐらいの男性がそう話していたのが聞こえた。
前後の会話の流れ自体は一切わからなかったので会話の全容はわからないが、それにしてもツッコミを入れたくなるようなパワーワードであった。
彼らは二人とも控え目そうな男性だったが、お互いの人生観のようなものを無駄に熱く語り合っていたと記憶している。
恐らくではあるが、彼は餓死を安楽死のようなものとして考えていたのではないだろうか。
餓死はヤバイと聞く。何がヤバイかというと、おなかがすいて死ぬのがヤバイのだ。
あれから二年ほど経った。彼は今も餓死に向けて己の人生を歩んでいる最中なのだろうか。私にはちょっと彼を応援することができない。もう少し安らかに人生を全うしようぜ。
焼いた肉が目の前に広がっていながら、餓死に思いを馳せる芸当、私にはちょっと真似できない。